書くことは脳の機能を上げる

近頃は、多くの職場で「紙」が滅っているそうです。理由はもちろん、パソコンの普及です。必要な資料をデジタル化して保存する、連絡には電子メールを使う 。いずれも今や、当たり前のことになりました。結果、オフィスで使われる紙が減ったわけです。

パソコンで書けば、手や指はほとんど疲れません。どんなにたくさん書いても、文字が乱れることもありません。書いたものはハードディスクに保存できますし、それを整理分類することも簡単です。パソコンは間違いなく、私たちの生活を進化させました。

しかし同時に、「手で書く機会」は激減しています。最近は、FAXで手書きのメッセージを送ることさえ少なくなりました。一日に一度も文字を杏かない、という人も決して少なくないでしょう。しかし、「脳を広く使う」「脳に刺激をりえる」という観点からすれば、これは損なことです。ベンを持ち、紙に書く。この行動によって、脳は確実に鍛えられます。

脳というのは「鍛えることのできる器官」です。使えば使うほど、刺激を与えれば与えるほど、脳の機能は向hしていくのです。さてそれでは、「書くこと」によって、脳のどこを、どのように使うことになるのでしょうか。たとえば「あ」という文字を手で書くことを考えてみると、脳はまず「文字を思い出す作業」をします。「あ」とは、どのような形なのか。そのことを、膨大に蓄積された記憶の中から取り出すわけです。

呼び出された「あ」という文字は、言語中枢で分析され、「ワーキングメモリー」(一時的な記憶をとどめておく場所)に保存されます。次いで、「文字を書け」という指令が、運動神経の中枢から出されます。指先をきちんと動かすために働くのは、小脳です。さらに視覚中枢が、指先の動きを補正します。

たった一つの文字を書くのに、脳はこれだけの作業を行うのです。複雑な漢字を書くときには記憶回路はさらに活発に働きますし、たとえばハガキに文字を書き込もうとすれば、「書きたいことを一定のスペースに収める工夫」も必要になります。パソコンで何かを書くときも、もちろん脳を使います。しかし、脳は「文字の形」については何の刺激も受けません。小脳や視覚中枢の受ける刺激も少なくなります。

パソコンを使う場合、ブラインドタブチを習得する過程では、脳はさまざまな刺激を受けます。しかし、ブラインドタッチを習得したあとに考えるのは、「何を、どう書くか」ということに限られてしまいます。それはそれで効率的なことですが、時には手で文字を書き、脳を鍛えていく必要があるのです。

とはいえ、ただ漫然と書いているだけでは、大きな効果は期待できません。たとえば「50音順にひらがなを書き出す」という動作であれば、最初の数回だったら脳は刺激を受けるでしょう。しかし、それを10回20回とくり返しても、効果はほとんど期待できません。「50音順にひらがなを書き出す」という動作に対して、脳に一定のプログラムが作られてしまうからです。簡単に言えば、慣れてしまうわけです。

したがって、手で何かを書くときはテーマを設定する必要があります。単に文字を書き連ねていくのではなく、深く考えたり、緊張感を持ったりしながら書くのです。最もポピュラーな方法は、日記をつけることでしょう。もちろん日記をつける習慣は脳の鍛錬につながりますが、しかし「書く習慣」は、他にも無数と言っていいほどたくさんあります。

脳に刺激を与える「書く習慣」について、特に効果的なものを挙げてみました。すべてを毎日実践するのは不可能でしょうから、面白そうだと思うもの、効果がありそうだと思うものをピックアップして、挑戦してみてください。実践したものを発展させて、オリジナルの「書く習慣」を次々と開発していくこともまた、脳を作り替え、発達させていく大切な行動です。

— posted by 楢島 at 12:17 am